Yesのライブ参戦レポート

感じた想いをそのままに参戦したライブをレポートしていきます。

SYMPHONIC NIGHT vol.2 ナポリ幻想 at Tsutaya on East

学生時代、プログレに対してどうも苦手意識が強かった。プログレ好きの親友が時折薦めてくる音源も当時の自分には到底受け付けられなかった、ある2曲を聴くまでは。。。

 

新月の『鬼』

チェルベッロの『メロス』

 

このプログレ史上に残る裏大名曲に出会ってからというもの、自己内の音楽的世界観が180度変わった。それまでの狭い先入観が見事にとっぱらわれて、それ以降ジャンルにこだわる事無く幅広い様々なジャンルの音楽を求めるようになった。

そんな自分の価値観を大きく変えてくれた新月とチェルベッロとは何か?それは70年代に裏プログレ史に残る大傑作アルバムを1枚ずつを発表して人知れず解散してしまった伝説のバンドである。

彼らの音源に出会ってから15年以上経過した今、唐突に想定外のビッグニュースが飛び込んできた!

 

"幻のバンド【チェルベッロ】の初来日公演"

 

え?初来日って?バンドはとうの昔に解散しているけど復活するの?

どうやら初来日公演のために一次的に再結成をするという。そんな付け焼き刃なバンドで大丈夫なのか?とこちらの心配を他所に畳みかけるような追加情報が。

対バンはあの『新月』。

最近再結成を果たして現在も精力的に活動しているのでもしやとは思っていたが、正に幻+幻=奇跡!!!

こんな夢のような出来事が実際に起こるのか、いや起きてしまうのかーっ!もちろん伝説のバンドを教えてくれた親友Nと学生時代に抱いていた淡い想いを馳せて幻影達に自ら会いに行くことにした。

 

会場はTsutaya on air east。以前は渋谷 on air eastという名前であったが、思い起こせば20年前、そのプログレマニアに洗脳されてどハマりしていたSwedenのクリムゾンこと【Anekdoten】の初来日公演を、親友Nと目撃したのもこの場所だった。人生で初めてのライブハウス体験が北欧のゴリゴリでドロドロのディープなプログレバンドだったのだから、今思えば高校生にとってかなりハイレベル過ぎるライブ初体験だったのかもしれない。というわけで20年振りのon air eastである。

どんな客層なのか?ちゃんとチケットは売れているのか?など不安と期待を胸に会場に到着。チケット番号順に入場制限中なほど人が集まっている。意外に多い。あれ?確かにおっさん連中は多いけど若い人達もちらほらいる。前にいるのは10代のゴスロリ系に見える。予想外の客層に呆気にとられていると、隣の若者がこう話していた。

「入場したらダッシュで前方に行こう」

あれ???本公演は全席指定でシッティングのはずなんだが、なんかおかしいな。と周囲を確認したら我々が並んでいたのはOn air EastではなくTsutaya on air Westだった!Eastは更に奥じゃないか!あぶないあぶない。。。急いでOn air Eastに移動したが、会場前に待機している人など誰1人としていない。すんなり中に入るとパイプ椅子な敷き詰められており、既に半数以上が着席していた。今日の公演はオールシッティングライブ。年齢的に最近スタンディングライブが辛くてしかなかったので、弱ってるアラフォーにとってこのようなシッティングライブはほんとうに有難い。

 

新月

新月ではなく正しくは新月プロジェクトである。プロジェクトと名を冠している理由は、オリジナルの新月とボーカルメンバーが違うからである。オリジナル新月のボーカリストの北山氏はいろいろといざこざがあったというのと現在登山家になってしまったのでバンド活動は不可となり、代わってゲストボーカルとして招かれたのは、ザバダックやソロアーチストとして一時代を築いた、あの上野洋子女史だ。テレビやライブ映像などでしか動くお姿をちゃんと視認した事がなく、勝手にミステリアスなミロのビーナス的イメージを抱いていたのがいけなかったのだが(当時の映像を見るに本当に美女)、今は完全におばさんになっているではないか。。。ジャップスプログレ界隈とこれまで密接な関係を築いてきた、いわば戦友的な存在だからでの抜擢なんだろうけど、オリジナルの北山氏の声質と似ても似つかないほどに声のベクトルが違い過ぎて違和感が否めない。そしてメンバー全員着席スタイルでの演奏。リーダー兼keyの花本彰氏, Gt津田氏のオリジナルメンバーの両巨頭を筆頭に、ベースアコギドラムパーカッションピアノの7人編成の、バンドとしては大所帯な構成による隙のないスタジオ音源の再現に重きを置いたような確実で実に質の高い演奏を繰り広げていたのはプロフェッショナルの一言。前半は新月プロジェクトの名で再結成してから発表した新曲を中心に、後半はあの名曲【鬼】(新月は正直この曲だけを聞きにきた)を含む初期音源から。前半はフュージョンライクな自分の苦手な分野の初聴の楽曲が続いたこともあり、とても退屈な時間が続いたが、中盤あたりでようやく【鬼】の演奏。これまでもう何百回と聞いてきたこの幻の名曲を、オリジナルフルメンバーではないけれども花本/津田氏などの主力メンバーがいる生新月を目の前で目撃する日が来るとは夢にも思わなかった。スタジオ音源よりもテンポを落としたリアレンジな【鬼】、津田氏のあのまんまのギターソロや花本氏のテクニカルな和音階の独特のフレーズなど新月ワールドがこの1曲に全て凝縮されていることをあらためて実感。ただやっぱり上野嬢の声質は違うんだよなあ、そうじゃないんだよなあ、という違和感が最後の最後まで拭い去ることが出来なかったのがとても残念だった。

 

・チェルベッロ

超絶ギタリスト、コッラード・ルスティーチ率いる夢にまで見たインタリアンプログレシブロックの幻影が目の前にいる。それだけで幻想、というか白昼夢をみているような感覚で終始ふわふわしていて正直言って記憶があまりないのだが頑張って記憶を辿り寄せながら記載しようと思う。まず全員がオリジナルメンバーではない事は事前に告知されていた。特にボーカル。上記新月状態だったらどうしようかと思っていたが、声質が似たクオリティの高い20代の若手ボーカリストだったが、彼はユーロプログレをなんたるかを理解している事が歌声からひしひし伝わってくるように違和感なくチェルベッロとして溶け込んでいたのが安心できる要素だった。アルバム1枚だけで解散したバンドだから、ミュージシャンとしての腕は大丈夫なのかと勝手に心配していたが、前記のコッラードはその後もずっとプログレ/ジャズ界隈で一線級のギタリストとしてずーっと活躍し続けているようで(現在進行中、バリバリの現役)、2年前のOSANNAの来日公演時にメンバー(Gt)として日本に来たとMC(English)で話していた(わざわざ説明不要だと思うがOsannaのリーダー:ダニーロ・ルスティーチは彼の兄)。まあとにかく演奏力が半端ない。そしてとにかくコッラードのギターが超絶に巧い。大名曲【メロス】も目の前で生演奏を体現できこの目にしっかり焼き付けることが出来たので、文字通り感無量な一生の記憶に残る一日であった。